未経験からプログラマーを目指す場合、知識やスキルがあることを示すために資格を取りたいと考える方も多いかもしれません。
しかしプログラミングに関する知識や経験がほとんどない状態では、どんな資格が高い評価につながるのか、そもそも本当に資格は必要なのかが、よくわからないでしょう。
そこで今回は、プログラマーとして働く場合必要になる資格や、初心者の方に取得をおすすめしたい資格などをご紹介します。プログラミング初心者の方、プログラマーとして仕事をしたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
- 資格が必要派・否定派の意見を知りたい
- 資格取得のメリットを知りたい
- 資格取得すれば報酬が増えるか知りたい
- 初心者におすすめの資格を知りたい
そもそもプログラマーに資格は必要?
結論からいえば、プログラマーとして働くのに必要な資格というものはありません。たとえば医師や弁護士などのように、国家試験に合格した人しか就けない職業というものもあります。
しかし、プログラマーはそういった職業とは違います。プログラミングに関する最低限の知識やスキルがあれば、誰でもプログラマーとして働くことができるのです。
それをふまえた上で、プログラマーとして働くのであれば資格を持っている方がいいと考えている人もいます。一方で、資格は必要ないと考えている人もいます。人それぞれ意見は異なるため、まずは双方の意見を確かめてみましょう。
必要派の意見
プログラマーでも資格の取得は必要だと考える方の意見としては、「資格によって自分の持っている知識やスキルをわかりやすく可視化しアピールできる」ことが挙げられます。
自身のスキルや知識を、就職面接などですべて伝えてアピールするのは難しいことですが、資格を持っていれば、その資格を得られるだけの能力は持っているという証明になります。
特に未経験でプログラマーとして就職・転職しようとしている方にとっては、資格は自分の能力を証明してくれる大切な要素にもなります。
実務経験や実績などがほとんどない人材を採用するとなると、企業側は大きなリスクを抱えることになりますが、そのリスクを少しでも減らせれば未経験でもプログラマーとして採用されやすくなるでしょう。
採用する企業や案件を依頼するクライアントは、資格を1つの目安として任せる仕事の内容を決定するなど、業務をスムーズに進められる効果も期待できます。
いらない派の意見
プログラマーとしてわざわざ資格を取得する必要はないと考えている人の意見としては、「資格がなくても業務上必要な知識やスキルがあれば問題なく働ける」というものが目立ちます。
プログラマーといっても、どんなシステムを開発するか、どのようなプロジェクトに参加するかによって必要になるプログラミング言語の知識やスキルは違います。たとえばJavaに関する資格を持っていたとしても、Javaはあまり重要ではない案件の仕事には役に立ちません。
企業によって案件の傾向や方向性はある程度決まっており、必要になるスキルや知識も概ね決まっていることでしょう。
わざわざ資格取得のために勉強をするよりは、今いる会社で役立てられるプログラミングスキルについて学ぶ方が現実的な上、身につけた知識がすぐ結果につながります。
働き方や目指すゴールによって違ってくる
プログラマーになることだけを目標としているのであれば、資格は一切必要ありません。しかしプログラマーとしての働き方に理想や目標を持っていたり、目指すゴールが明確であったりする場合には、資格が必要になるケースもあります。
そこでここからは、資格が必要な人・いらない人の特徴をそれぞれまとめました。自分の目標や理想のために、資格が必要かどうか判断しかねているという方は、参考にしてみてください。
資格が必要な人とは
未経験者、初心者の方
資格を取得するメリットとしては、自分のスキルを客観的かつ対外的に証明できるという点がいちばん大きいでしょう。
この恩恵をもっとも受けられるのは、実務経験が少ない未経験者、初心者の方です。本来は実務経験やこれまでの実績を加味して評価される部分を、資格によって多少はカバーできます。
知識の応用が苦手な方
また、資格取得という目的を設定することにより、関連する技術をひとつながりで、体系的に勉強しやすくなります。資格のようなわかりやすいゴールなしでプログラミングを学習していると、どうしても知識の1つ1つが断片的な記憶になる傾向があります。
その結果、知識はあっても応用して活かすのは苦手、という実践的でない勉強ばかりに時間を費やすことになってしまいます。資格の取得を目指して勉強していると、知識がすべてつながりを持った状態で記憶されるため、実際に知識を活かしたコーディングに取り組む際にも応用が利きやすくなります。
実務経験がほとんどなく、知識を応用して対応することに不慣れな初心者の方にはうれしいポイントではないでしょうか。
総じて、プログラマーとして転職し、正社員として雇用されることを目標にしている方は、資格の取得による恩恵を多く受けられると予想できます。
学習のモチベーションを保つのが苦手な方
また、プログラミング学習のモチベーションを保つのにも資格の取得が効果的です。プログラマーとして働く以上常に知識をアップデートしていく必要がありますが、そのためのモチベーションをキープするのはなかなか難しいことです。
自分の意志ではモチベーションを保ちきれない方にも、資格の取得が必要といえるでしょう。
資格がいらない人とは
プログラマーにおいて、基本的に資格は自身のスキルを示すものという側面が強いです。そのため、自分のスキルを他の方法でしっかりアピールできるのであれば、わざわざ資格を取る必要はないといえます。
資格は一定以上の水準の知識を持っていることの証明にはなりますが、資格を持っていれば現場できちんと働けるというわけでもありません。知識はあるけれどなかなか実践には活かせず、現場では役に立たないまま終わってしまうという方も少なくないのです。
逆に考えれば、資格がなくても自分の実績や実務経験をアピールできるのであれば、改めて資格を取得する必要はないと考えられます。
資格取得のメリット
これまでにも触れてきましたが、改めてプログラマーとして資格を取得することで得られる具体的なメリットをご紹介します。自分にとっても有用なメリットがあるかどうか、ぜひチェックしてみてください。
自分の持っているスキルを証明できる
難易度が高い資格を取得できれば、自身のプログラマーとしての知識やスキルが一定の水準以上に達していることの証明になります。プログラミング業務については実践の中で学ぶ部分もありますが、そもそも前提となる知識がなければ理解すらできません。
わからない部分をその都度調べながら作業を進めることもできますが、時間がかかる分効率は落ちてしまいます。資格を取得できていれば、そういったデメリットなく作業可能な知識があると証明できるわけです。
特に未経験からプログラマーを目指している人は圧倒的に実務経験が不足しているため、そのウィークポイントを補いカバーするという意味でも資格の取得は効果的です。
プログラミング知識を体系的に学べる
プログラミングの学習において、知識を体系的に学ぶことには大きなメリットがあります。それは、知識の応用範囲が広がるということです。
1つ1つの知識を断片的に、個別の情報としてインプットしていると、実際の業務で必要になった際に応用が利かず、これまでに学習してきた知識を有効活用できないことがしばしばあります。
それぞれの知識を組み合わせて応用する技術は、実際にコーディングなどの業務を行う中で自然と身についていくものです。
しかし、実務経験が少ない初心者の方や、プログラミングの基本的な知識を一通り学び終わっただけの未経験の方がすぐにプログラマーとして働きはじめるには、こういった実践的なスキルもできるだけ早いうちから身につけておくことが大切です。
具体的な目標の設定により学習意欲やモチベーションの向上につながる
プログラマーとして長く働くつもりであれば、一通りプログラミングの知識を学んだだけではまだまだ足りません。
IT関連の技術は毎日のように進歩し、アップデートされています。そのIT関連技術を使って仕事をするプログラマーであれば、常日頃から怠ることなくこういった知識をアップデートしていかなければいけません。
この「毎日勉強を継続していく」という点が大変難しいところです。「プログラマーになる」という目的があった頃はプログラミングの勉強に熱が入ったけれど、プログラマーになった後は明確な目標がないため学習意欲やモチベーションを保てず最終的には挫折してしまった、というケースもよく見られます。
資格の取得を1つの短期目標にすることでゴールが明確になり、プログラミング学習に対するモチベーションをキープしやすくなります。難易度の高いプログラミング言語などにチャレンジするモチベーションにもつながりますね。
資格を取得すると収入・給与は変化する?
資格を取得するさまざまなメリットについて解説してきましたが、特に気になるのは「資格の取得によって収入や給与に変化はあるのか」ということでしょう。
資格の取得が評価につながり報酬がアップするかどうかは会社次第ですが、多くの会社で「資格手当」が発生することがあります。
およそ4割の企業で資格手当が支払われている
資格手当は、大きく2つの種類に分かれています。1つは、毎月の基本給にプラスして支払われる手当です。そしてもう1つは、資格を取得した際に一時的に支払われる「合格報奨金」です。
厳密にいえば、毎月決まった額が支払われるものが資格手当、一時的に支払われるインセンティブについては合格報奨金と呼ばれて区別されています。
プログラマーをはじめIT系のエンジニアを対象にしたアンケートでは、資格を取得できれば、資格手当もしくは合格報奨金が支払われる企業は全体の41%という結果が出ています。
半数には若干足りませんが、およそ4割の企業で資格の取得による金銭的なインセンティブが得られるということですね。
資格の難易度で報酬額は変わる
注目するべきポイントは、資格手当や合格報奨金の金額は取得した資格の難易度によって大きく上下するところです。
難しい資格であれば合格報奨金の支給額は10万円を超えることがあったり、毎月支給される資格手当が2万円を超えるケースもあったりします。
一方で、取得するのが簡単な資格においては資格手当や合格報奨金の金額も安くなる傾向があります。せっかく資格を取得しても、資格手当が月に数千円しか得られないこともあるでしょう。
収入アップを目指して資格の取得を考えている方は、難易度が高い資格にチャレンジしてみてください。
初心者におすすめの資格5選
取得の難易度が高い資格ほど得られるメリットも大きいですが、初心者のうちからレベルが高い資格に挑戦するのは難しい部分もあるため、目標とする資格選びには注意が必要です。
候補となるIT系の資格は多数あり、メリットと取得難易度が釣り合っているものを探すだけでも大変な労力がかかります。
そこで、まずは初心者にもおすすめの資格を5種類ご紹介します。どんな資格を取ればいいか迷っているという方は、ぜひ参考にしてみてください。
IPA基本情報技術者試験(国家資格)
IPA基本情報処理技術者試験とは、独立行政法人情報処理推進機構、略してIPAが「情報処理の促進に関する法律」に基づいて行っている国家試験の1つです。
内容としては、情報処理の基礎や情報技術の原理、知識、技術などが一定水準以上あるか、きちんと理解できているかなどを総合的に問うもので、特定のプログラミング言語やスキルに関する試験ではありません。
さらに上位の資格として、IPA応用情報処理技術者試験があります。こちらは基礎的な技術や知識だけでなく、プロジェクトの管理や経営なども含め、より高度なIT事業に精通した人材に必要な幅広い知識や応用力が試される試験です。
初心者にもおすすめの理由としては、国家資格であること、幅広い基礎的な知識があるとアピールできることなどが挙げられます。
未経験でプログラマーを目指す場合、ほとんどの人がシステム開発などに携わった経験がないでしょう。しかしこの資格を取得できていれば、システムの運用保守業務などについての知識もあるということで一定以上の評価が得られます。
特に、未経験からIT業界に飛び込もうとしている方におすすめできる資格です。取得難易度は普通で、未経験のプログラマーであれば4カ月ほどしっかり勉強していれば合格できる程度の難しさです。
ただプログラミング以外の知識に関する出題も多いため、きちんと対策をしておくことが大事です。
Java Silver SE8
アメリカの企業・オラクルが行っている、Javaの認定資格「Oracle Certified Java Programmer」のうちの1つです。Oracle Certified Java Programmerはゴールド・シルバー・ブロンズの3つのバージョンに分かれており、同じ資格内でも徐々にレベルアップしていける構造になっています。
Javaは多くのシーンで使われるプログラミング言語で、特に大企業や公的機関の開発現場を中心に採用されることが多いです。また堅牢性・万能性が高いという特徴があり、汎用性も高いため、Javaを一定以上の水準で扱えるというのは大きな強みです。
有名なプログラミング言語である分Javaにまつわる資格の数は多く、資格があればJavaが使えることの証明になり、Javaを扱えるプログラマーを欲しがっている企業の目にも止まりやすくなるでしょう。
取得難易度もそれほど高くなく、実務経験が1年ほどのJavaプログラマーが挑戦する程度のレベルです。シルバー以上であれば全世界のエンジニアにも通用する資格のため、自分のスキルを証明するのに適しています。
LPICレベル1
Linux技術者認定機関・LPIが行っている、世界共通の資格試験です。こちらの資格を取得できれば、Linux技術者として一定以上のスキルを保証されるというわけです。
LPICはレベル1から3までの3段階が用意されており、Linux関連スキルが身についていることを証明できる試験です。
Linuxは、もともとWindowsやMacなどの影に隠れて知名度の高くないOSでしたが、現在は民間企業への導入もはじまっており、Linuxを取り扱える人材のニーズは今後も高まることが期待されています。
未経験からプログラマーになり実際に採用してもらった場合、Linuxに触れる機会があるでしょう。そのときにいろいろと教えてもらえるとはいえ、転職活動をする上でははじめからLinuxのサーバーを運用管理できる点をしっかりアピールしていくことが重要です。
慣れないOSではじめは苦労するかもしれませんが、実は習得難易度が比較的易しいこともあり、独学でも1カ月ほど勉強すれば合格圏内まで手が届くでしょう。
PHP技術者認定試験
プログラミング言語の1つであるPHPの普及と発展を目的とする組織、PHP技術者認定機構が実施している試験です。
PHPは、Web関連の業界では昔から人気を集めているプログラミング言語です。日本でも開発現場で使用する言語として採用している企業は多く、フリーランスのプログラマーが受注できる案件の数も多いようです。
全世界のWebサイトの4分の1を占めるWordPressと相性が良い点も注目を集めており、フリーランスで働く人にもぜひおすすめしたいプログラミング言語です。
PHP技術者認定試験に合格できれば、PHP関係のエンジニア・プログラマーとして技術力をまっとうに評価してもらえるでしょう。試験のために学習しなければならない範囲は広いですが、取得難易度自体は初級であれば比較的易しいため、ぜひトライしてみてください。
Ruby技術者認定試験
Rubyというプログラミング言語のさらなる普及・発展を目指す組織「Rubyアソシエーション」が実施している試験です。
Ruby技術者認定試験は、Rubyを使ったシステムの設計や開発、運用するエンジニア、Rubyでシステムを考案するコンサルタントの方、そしてRubyを教えるプログラミングスクールの講師など、幅広い受験者を対象としています。
Rubyは収入やシェア面から見ると、今大変勢いがあるプログラミング言語の1つです。その上、初心者でもわかりやすいため、これからプログラマーを目指して勉強しようと考えている未経験の方にもぜひ学んでほしいプログラミング言語です。
Ruby技術者認定試験に合格することでRubyエンジニアとしての技術力が評価されれば就職・転職にも有利なため、ぜひ取得してみてください。
系列別おすすめ資格と難易度一覧
ここからは、初心者向けというくくりではなく、プログラマーの系列別におすすめの資格と取得難易度をまとめてピックアップしました。どのような系列のプログラマーになるのか、すでにはっきりと決めている方はこちらの資格もぜひチェックしてみてください。
プログラマー全般におすすめの資格と難易度
ITパスポート
社会人のみならず、大学生など幅広い世代から人気を集めている資格がITパスポートです。非常にカジュアルな資格で、取得難易度も高くありませんが、情報処理技術者試験の1つとして認められている国家資格です。
C言語プログラミング能力認定試験
国家資格ではなく民間試験ですが、C言語に関するプログラミングスキルを示す上では大切な資格です。難易度は低めで、プログラマーとしての実績が少ない方でも無理なく合格を目指せます。
Web系プログラマーにおすすめの資格と難易度
PHP技術者認定試験
先述したPHP技術者認定試験は、大変需要の高い資格の1つです。初級と上級に分かれていて、初級は合格率70%程度の簡単な試験のため、初心者の方でも無理なく目指せます。
上級は実務経験のあるプログラマー向けの内容となっているため、プログラマーとしての経験を積んでからぜひチャレンジしてみてください。
Ruby技術者認定試験
先述した通り、Rubyは多くの場面で使用される汎用性が高いプログラミング言語のため、資格を持っているだけで仕事の幅を増やすことにつながります。
シルバーとゴールドの2種類がありますが、シルバーは難易度が比較的低く初心者の方でも無理なく挑戦できます。
Sler系プログラマーにおすすめの資格と難易度
ORACLE MASTER
データベースに関する知識についての資格です。データベース関係の知識はSler系のプログラマーにとっては基礎的な知識のため、こちらの資格を取得し自身のスキルや知識の証明に使うのもおすすめです。
ランクはゴールド、シルバー、ブロンズの3種類に分かれていますが、ブロンズまでなら比較的簡単に取得できます。
マイクロソフト認定試験
名前の通り、マイクロソフト社が行っている認定試験です。マイクロソフトという世界的に有名な企業が実施していることもあり、全世界で通用する資格として知られています。
分野ごとに資格が分かれていて必要なものだけを受けられますが、中でもC言語についての資格は信頼性が高くおすすめです。
資格なしプログラマーでも活躍できる?
資格がなくても働けるプログラマーですが、資格を取得することで自身のスキルや能力を示せるとご説明してきました。「それならやはり資格が必要なのでは?」「資格を持っていなければプログラマーとして活躍できないのではないか」と感じる方も多いかもしれません。
しかし、資格の有無とプログラマーとしての活躍は、実はあまり関係がないといえます。プログラマーに関する資格にはさまざまなジャンルのものがありますが、その多くは当該ジャンルに関する知識を問う内容の試験です。
つまり、プログラマーに関する資格であっても、受験の際にプログラミングをするわけではありません。極端にいえば、どれだけ難しい資格であっても、知識さえあればプログラミングスキルがなくても取得が可能なのです。
プログラマーとして活躍するためには、プログラミングスキルがいちばん重要です。資格があってもなくても、プログラミングスキルさえ身についていればプログラマーとして十分活躍できることは心に留めておきましょう。
まとめ
今回はプログラマーにおすすめの資格や、資格があることによるメリットなどについてご紹介しました。プログラマーにとって必須の資格はありませんが、資格を取得することで就職・転職の際に恩恵を受けられる可能性もあります。
自分のプログラマーとしてのスタンスや目指す働き方に応じて、資格の取得にもぜひチャレンジしてみてください。